【あえて+5Vを確保する必然性】

最近、管理人の周りには、稼動や充電に際して+5Vを要求する機材(およびオモチャ、ガラクタ)が急速に増殖しつつあります。
そうなれば、当然それらを自動車内で稼動(ないし充電)する機会も増えてくるわけです。

(イマドキ3.3Vじゃないの? って突っ込みは却下)

ここで、フツーは、車内にインバーターを設置し、そこに100V用の(機材付属)ACアダプタをさらに接続、5Vに安定化したのち利用、というパターンがほとんどでしょう。
ただし、エネルギーのロスという観点からみれば、コレ非常によろしくない。
インバーターとかスイッチングレギュレタなんてのは、おそらく出力に対してだいたい120%、ヘタすりゃ150%程度の入力がないとダメ、ってくらいのロスでないかと。管理人の経験的には。

というわけで、自動車内で、汎用的に安定化した+5Vを供給することを考えてみます。

(だいたい、いちいち専用ACアダプタをインバータに接続して使ってなんか居られますか…メンドクサイ。)←本音


−−注意・警告−−
機材発売元の指定以外の電源を接続することは、例によって保証規定等に盛大に干渉する恐れがあります。
そこら辺は下記記事を読んで、「おぉ!」と納得できた方のみチャレンジ。
そこら辺に納得出来ないブルジョアで、かつ、
「家とクルマとACアダプタが行ったり来たりするのはメンドーだよー」ってヒトは純正アダプタを買い増しなされ。
そこら辺に納得出来ない貧乏人で、かつ、
「家とクルマとACアダプタが行ったり来たりするのはメンドーだよー」ってヒトは我慢しなされ。


【とりあえず、バラす。】

それでは本題に入ります。

今回のお題はコレ。
「100円ショップダイソー」で売っている315円商品、「自動車用携帯電話充電器スケルトン」である。

ちなみに、同所より販売されている105円商品である「パソコン用USB携帯電話充電器」は、USBポートに5V来ているのが保証されていることをいいコトに、抵抗一本入れただけの簡素な充電器である。このことから、

「これって、テキトーに5Vに落として、
その後にUSBと同じく抵抗一本入ってるダケじゃないの?」

という当然の推論をして、315円のギャンブルとして購入したものである。

12V車も24V車も共用であると書いてあるからには、車両の12Vをアテにして単純に定数ドロップ、なんてハズはなく、何かしらのレギュレートはしているんだろうが、まあ、どうせドロッパ方式で落としてるんだろーなと。

でも、例えば7805が1個だけ入ってるにしても、
・7805…100円
・ケース…100円
・ケーブル…100円
では入手出来ないわと思って買ってくる。逆にいえばコレが300円ってのは安いよねぇ、まったく。

おまけにアレだ、パッケージを見る限り、「過充電防止機能」と「逆流防止」がついてるんだそうだ。
ここまで制御して300円なら大したもの。大昔のDoCoMo用の車載充電器なんか、マジ7805が一個入ってるダケのような作りだったのよ。



左が出力側、右が入力側。

当然ながらというか、ま、買ってきてスグにバラしてしまう。
携帯電話を繋いでの動作試験なんかまったくもってヤル気ナシ。

意外なことに、ドロッパ1チップほど簡単なつくりではない。生意気にも、8ピンのICなんぞ載ってやがる。ちなみIC上の部品番号は「EX 34063」とある。

さてこのIC、web上ではそのものズバリの発見は出来なかったものの、モトローラのDC-DCコンバータ、「MC34063」の互換品であろうと見当を付ける。

(MC34063のデータシートはこちら。ただしPDFにつきナロバン注意。)

データシートによると、1.5A通過させられるんだってさ。すごいね。


ちなみに、内部回路図としては、



←こんな感じだそうです。
(図は上記データシートより引用)

しかし、こんなDIPのICでBottom Viewはカンベンしてほしかった…。



【回路解析(こういうのを、本来の意味で「ハッキング」という。)


「回路図1」

というわけで、基盤をベースにして、サクっと周辺回路図など起こしてみます。
ダイソーのパターンに忠実に回路図を書いたので、ちょいとゴチャついてますが、ご勘弁。

なお、1ピンと8ピンは、ICの下でショートしてます。ちょっとこの図ではわかりにくいですな。
1ピンと8ピンを結ぶ太目の水色の線がそれです。



上の「回路図1」は、ちょっとパターンに忠実すぎて、理論回路図としては見難いので、ちょいと回路図を整理いたします。
整理ついでに、データシートに習って8ピンを左上(つまり下から見た図)の図に変更をいたします。

で、こっち↓がパターン図を整理したもの。

「回路図2」
こっち↓はデータシートに載ってる参考周辺回路図。

「回路図3」

お、おぉ? なんだなんだ、全くと言っていいほど同じ回路ではないか。やるな、ダイソー。
(おや、「過電流止機能」と「逆流防止」は何処へ行った…?)


【改造の方向性と理論計算値】

さて、データシートによれば、肝心の出力電圧については、「Vout=1.25×(1+(R2/R1))」となっています。

ただし! この場合の”R2”、”R1”はあくまで、データシート上の、すなわち「回路図3」上での部品番号です。
ダイソー版回路図(「回路図2」)でみれば、
・データシートのR2→ダイソーのR3
・データシートのR1→ダイソーのR2
と読み替えることが必要です。

以下、特に断らない場合は部品番号はデータシートに準じて記載します。

そうするってーとダイソーの方は、

Vout = 1.25×(1+(5100/1500)) = 1.25×(1+3.4) = 1.25×4.4 = 5.5(V)

であると予想されます。

あれ? 5Vじゃなかったのか?なんて思って実測してみれば、図のとおり約5.5Vですな。実際に。

ちなみにココで不思議に思って手元の携帯電話機の純正充電器を見てみれば、確かに出力は5.5V。
へー、携帯電話って5.5Vで充電するのか。知らんかった…。

(じゃあどうしてUSBから充電できるのだろう…???)


実測値↑

 

まあいいや。

さて、これを5V仕様に改造したいわけですから、R2、R1をテキトーなモノと入れ替えます。
両方入れ替えるのは面倒なので、作業しやすそうなR2を入れ替えることを前提に計算すると、R2を4500Ωに変更すれば、

Vout = 1.25×(1+(4500/1500)) = 1.25×(1+3.4) = 1.25×4.4 = 5.0(V)

となって按配が良いのですが、そう上手くも行かないので、4.7KΩに変更してゴマカしとくことにします。
すると理論上の出力電圧は、

Vout = 1.25×(1+(4700/1500)) = 1.25×(1+3.4) = 1.25×4.4 = 約5.17(V)

ですな。…まあ、この位の過電圧には目をつぶってもらう事にしよう。
ヒマが出来たら測定機用の1%抵抗でも買ってくるかもしれませんがね。


手持ちがコレしかないの。
なぜか似たような値ばっか無くなるし。

 

というわけで、4.7KΩを使って改造、実測したところ、右図のとおりの結果が出ました。
5.14V。ま、各種デバイスにとっては許容範囲内でしょうよ…多分。

さて、出力コネクタは携帯電話の得体の知れないコネクタを付けといても仕方が無いので、テキトーに付けます。
各自、使用する機材にあわせて選定すべし。数種類の機材を取っ換え引っ換え繋ぐヒトは、フタマタ、三股、四股とかすると便利かも。

先端加工(ハンダ処理)の例


3.5mmコネクタにハンダ付け、
熱収縮チューブで絶縁。完璧。
我ながら美しいハンダである。うふ。


ついでの「カッコ付け」でもって、
「DC5V」と印刷した熱収縮チューブを装備。
自分で作ったから間違うコトはないだろうが。



【実働試験】

さて、いよいよ実働試験に移ります。
実験にあたって、エジキ試験機とするのはご存知「PSP」。
そろそろ(ページ作成は2005年5月)手に入りやすくなってきましたねぇ。
なお検証機はファームウェアがv1.0。


とりあえず、電源ON、内部電源稼動状態でプラグを突っ込んでみる。
"POWER"のLEDがオレンジに変わり、「充電中」になる。
ここまではOK。


左の写真だとちょっとオレンジが判り難いので拡大。

 

そのまま、稼動している状態で恐る恐る内部電池を外してみる。

すると、LEDが緑に変わり、「外部電源モード」にチェンジ。
うむ、通過電流は不足していないらしい。良い良い。

UMDのスピンアップとかで落ちるかなとも思ったが、
なかなかPSP自体が低電流設計のようである。感心感心。


【まとめと今後の課題】

これでひとまずOKってコトにしときます。
この後、デジカメ(KYOCERA Finecam SL400R)の充電も問題なく可能でした。

ただこの完成した「DCアダプタ」、正直に白状すれば、25インチのHDDケースを起動するとか、デジカメを外部電源のみで使うとかは、通過電流容量、というか立ち上がり電流の問題なのか、ちょっとキツいようですな。
ICのスペック通り1.5Aあればイケると思ったのですが。互換品でなく、ホントのモトローラ純正のチップでないと1.5Aは抜けないのかも知れません。

ちなみに、後日ダイソーで発見した別種の充電器。

こいつの方が細長い。

こいつをバラしてみたところ、

なんと、モトローラ純正のMC34063が入っとりました。
これなら1.5Aも夢じゃない?(未検証)

あと、もちろん出力電圧は好きなように設定できますし、筐体内部スペースもけっこう余裕がありますから、なんとなれば複数の抵抗値(すなわち出力電圧)を設定して…ってことも可能です。
ただし、管理人はそれやると「ヒューマンエラー」でもって、電圧設定間違って使う可能性がある…というより、間違える自信があるのでそれは作りません。だいたい、1個300円で作れるんだから電圧ごとに作ったって大した出費では…。


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